携帯男

◆登場人物◆


■只野さくら

 この作品の主人公。『○○ネット』という出会い系サイトでサクラのバイトをしている。サクラとは出会い系サイトの女性会員のふりをして男の客とメールする仕事。


■まーちゃん

 出会い系サイトがきっかけで筆者とつきあうことになった男性。出会い系サイトの客(男性会員)として登場。

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おしらせ(9)

読者になっていただいた方の紹介、させてください(*´∀`)ノ
ここに載っていない方は、もう少し待ってくださいね…
ちょっと、大変お待たせしました。


それと、基本的に読者になっていただいた方は、こちらからも読者登録させてもらおうかと、そんな考えでいます。
やっぱり、自分だけ、っていうのはよくないかな?って思うようになって…
時間取れ次第、処理していくので、お待ちください!


ルルさんが読者登録してくださいました!
キャバクラ嬢☆RuRu☆~もっと刺激をちょうだいっ!~
お仕事を通しての男性の生態って点では、こちらの方がリアルなんじゃないでしょうか?
ルルさんは、性格のかわいらしい人ですね。文章を読んでいて伝わります。


チアキさんが読者登録してくださいました!
☆ラブ アンド ライフ☆
チアキさんは、大人っぽい方ですね…男性に対して達観した何かをお持ちのような気がします。
でも、どこか悩んでいるところがあるようで…
多分チアキさんの悩みはハイレベルなものなんだなって気がします。


beautiful-aloneさんが読者登録してくださいました!
めぐり逢えたこと。
「彼氏追い型」の恋愛のようですね…
両思いなら問題ないんですけど、追いかけ型とか、負いかけられ型とか、ありますね。
でも、確実に言えそうなことは、「好きな人がいて、いいですね」ってことだと思います。


海野美羽さんが読者登録してくださいました!
素人娘
恋愛、下手なんだそうです…
恋愛のことなら何でも、さくらに聞いてください!



ウソです。 いっしょに泣きましょう。ヽ(T∀T )ノ


RIEさんが読者登録してくださいました!
♪RIE的生活♪
バンドでヴォーカルをされているそうです♪かっこいいです♪
わたし、到底ストイックなんかじゃないですよ(汗
でも、同じ東京で、共に戦って生きて行きましょう…


山田さんが読者登録してくださいました!
目指せ!電車男!脱オタしてモテ男に!
男子3日会わざれば、カツモクして見よって言葉があります。
登録して3日たちましたけど、どこか変われましたでしょうか??




ありがとうございます!  ヽ(゚∀゚)ノ

48.もはや、ありえない②

まーちゃん(300pt)→ゆりこ(伊原) 「出られるの?大丈夫なの?この前はゴメンねおわびは会ったときにうんとするね」


ゆりこ(伊原)→まーちゃん(265pt) 「待ち合わすの、島田の役所でいい?今度こそ会いたいね」


どこかで見た手口だった。
このコピーキャットめ~


まーちゃん(230pt)→ゆりこ(伊原) 「うん、そこでいいの?明日、早番だからあまり遅くはいられないかもだけど、顔見せだけでも」


ゆりこ(伊原)→まーちゃん(160pt) 「おうちみたいにお洋服いっぱいないけど、それでも、せいいっぱいおしゃれして出ちゃうよ~もう出る準備するから♪」


まーちゃん(125pt)→ゆりこ(伊原) 「ごめんね僕作業着みたいのだよオンボロ車で行くから先に行って待ってる!何かのためのポイント追加してから出ることにするよ!」



まーちゃん(1090pt)→ゆりこ(伊原) 「寒いね。いまコンビニで臭い消しみたいなの買っちゃった窓しめて暖房つけたいけど車の中臭いしたら嫌われると思って開けてる近くにきたらメールしてね車の中暖めるから」


まーちゃん(1020pt)→ゆりこ(伊原) 「あとどれくらいかな?」


まーちゃん(950pt)→ゆりこ(伊原) 「島田の役所でいいんだよね?来てるメールは全部読んだけど…」


まーちゃん(845pt)→ゆりこ(伊原) 「時間がどれだけかかりそうか、もしわからないんなら、今いるのがどこなのか、場所だけでもわからないかな?」


まーちゃん(775pt)→ゆりこ(伊原) 「返事できないの?携帯の電池切れかな?う~んとりあえずこのままここで待ってるけど…」


どうやら、この伊原君、他の客のメールを返すことに気を取られて、
自分からまーちゃんを呼び出したことを忘れてしまっていたようなのである。


偶発的な放置プレイ。
誘い出す方は無責任でいいかもしれないけど、寒い中待たされる者の気持ちはたまらない。



まーちゃん(670pt)→ゆりこ(伊原) 「さすがにもう夜中の12時ちかいし…心配まだ待ってるよ…」


まーちゃん(635pt)→ゆりこ(伊原) 「どうしたの?急に足止めでもくらったの?」


まーちゃん(565pt)→ゆりこ(伊原) 「とにかく無事かだけでも連絡ほしい!ゆりこのことほったらかして帰れないし、ここ動けないから…」


まーちゃん(495pt)→ゆりこ(伊原) 警察にでも言ったほうがいいのかな!?もしゆりこが大事なことになってたらどうしよう!?」


ずいぶん経ってから、ゆりこからメールを出している。
送信者が白石さんになっていた。


警察」というNGワードに反応した白石さんが、メールの前後を読んで、管理者権限で送信したみたいである。

警察」、「詐欺」、「殺す」… などのNGワードがメールの文章に含まれていると、そこの部分が赤く反転して、管理のBOXにも届けられるのである。


ゆりこ(白石)→まーちゃん(460pt) 「ごめんね、病院の玄関に出たところまでは覚えてるんだけど、目が覚めたら病院のベッドの上だったの…出たとたん、気を失って、それで病室まで運び込まれたらしいの…」



 …うそくさい。


もはや、



 ありえない。

47.もはや、ありえない①

休みあけ、出勤して
他の人の操ったわたしのキャラがどう振舞ったのか、チェックしていた。


美枝(伊原)→喜久雄(1095pt) 「ホントすっごく会いたかったのにぃ… すっごく残念ねぇ?わるいと思ってるならいまからへんじしてよぉ~」


この、伊原君は、中村君の一味の一人だった。
なぜかオフィス内でもマスクをつけて、猫背で作業をする人だった。


フロアは、サイト別に机で島を作って作業していたが、
彼らはそれを無視して、オフィスの隅でグループをつくってやっていた。


成績がいい(ポイントをたくさん削る)ので、管理も誰も、彼らに文句が言えないのである。


ゆりこ(伊原)→まーちゃん(335pt) 「まーちゃん、またわたし出かけられそうなんだけど、今日とか待ち合わせできないかなぁ?」



嫌な雲行きだ…


過去の履歴を読んで、誰かさんのマネでもしたかったの?
かと言って、伊原君、あなたにそんな芸当できるのかしら?



サクラにもいろいろ技術はあるけど、『会いネタ+まわし』は最高度の技を必要とする。


会いネタ+まわし』とは、

①待ち合わせ場所に客(メールの相手)を呼び出して、自分(キャラ)も現場へ行っていることにする。


②お互いすれ違い、すれ違いになるようにメールで誘導し、グルグル付近を移動させ、ポイントを削らせる。

というもの。


(ようやく、もう少しで会えるとこまで来たんだ)とか、(呼び出したのにいい加減にできない)とか、そういう心理状態からか、この段階になるとお客の方は通常、ポイントの勘定を忘れてどんどん返事を返してくる。


このキャラ、『ゆりこ』なら、病院で寝ていることにしていれば、平和にメール交換だけで済むはず、なのになんでわざわざ呼び出す必要がある?


少し腹がたった。


江戸時代、こんぺいとう職人は、角の数をいかに正確につくるかで、仲間と技術を競いあったという。


そんな誇り高いものかしら?


どうせ仲間と溜まっているときに「 …あの客、会いネタでまわしてやってよ~」とか、くだらない武勇伝の題材になるだけ…。


男の勲章のつもりかしら? バカバカしい…。


まーちゃんには、できれば見破って、出てこないようにしてもらいたい。



対してまーちゃんは、 どう出る…!?

                                            -つづく-

お知らせ(8)

読者登録していただいた方の紹介をさせていただきます。ほんと、かなり遅くなってしまって申し訳ありません。

仕事の方が最繁期でして、資格試験もあるしで…。


aki-smさんが読者登録してくださいました!
調教日記…
「今まで出会った女性のSM調教のお話」です。
愛の形もいろいろ。
ノンフィクション・フィクションの虚実入り混じった世界。
好きな人にはたまらんばい!


laliqueさんが読者登録してくださいました!
キャバクラ営業本部長 ~愛と虚像の経営学~
ホステスさんの裏話などが、かなりリアルに見えてしまいます。
10日で63万ですか…
考えてしまわなくもない数字だなと、夜食のおでんを食べながら思ってしまいました。


ひよこさんが読者登録してくださいました!
今日はどんな夢をみたの?
9月に入って更新が無いようですが、お互い疲れずに更新がんばりましょう。


家庭トミーさんが読者登録してくださいました!
家庭トミー★アホ夫に愛のムチ(´∀`)
やめちゃったんですか…?
気が向いたときにでも、少しずつでも書いていってもらいたいです。
なかなかみなさん、時間取れないんですね…


赤峰遥香さんが読者登録してくださいました!
赤峰遥香のシークレット日記
ギャンブル(競馬)の記事を書いておられます。
立派なプロフィールですね!
こうなったらお顔とか全部のっけてもらいたいです。
見てみたいです。さくらは…


garasunojuudaiさんが読者登録してくださいました!
FANTASISTA BLOG
データ型のブログですね?化粧品から野球選手までいろいろな情報が載せてあって、濃いです。
高密度な読み物が好きな人にはお勧めです。


今回紹介しきれなかった方は、もう少しまってください。

近いうちに必ず書きますので…


                                               さくら

46.道草

喜久雄(2985pt)→美枝(只野) 「おねがいだ!今度いつ休みがとれるかわからん。いま言った日のうちでどれか、出てきて会える日を指定してくれ!」


会うわけにいかないから逃げてるわけだけど、それが逆に会いたい気持ちに火をつけたらしくて、会おう会おうと追われていた。


喜久雄(2880pt)→美枝(只野) 「わたしに本気だっていうようなこと、言ってくれただろ!?私だってこのサイト、いつまで続けるのかわからんさ。今のうちに、さ、早く!」


『期間限定遅れると損だよ』作戦できましたか。
どう話を継いでいけばいい?


課題: お客さんの気をたたさず、相手の口から会うことを回避する言葉を引き出せ。


解答への指針: 人は追われると逃げたくなる(カリギュラ効果 参考:ふくしろ博士


あと、このお客さんの弱点を、わたしは知っていた。


喜久雄(1445pt)→すみ子(只野) 離婚?できないよ。若い頃いっしょに随分苦労してきたんだ。簡単には裏切れないよ。夫婦ってそんなもん!探してるのは割り切れる人だけ


喜久雄(735pt)→美枝(只野) 「 … 女房には足を向けて寝られない … 」



美枝(只野)→喜久雄(2810pt) 「わかったわ、じゃぁ今日にでもでていくでも、ひとつだけ条件があるわ」


喜久雄(2775pt)→美枝(只野) 「よし、じゃ今から準備する!で、条件って…!?」


美枝(只野)→喜久雄(2775pt) 「遠目でいいから喜久雄さんの奥さん見てみたいのどうしても今日、そんな気分だわ」


喜久雄(2740pt)→美枝(只野) 「どうして女房かね?よりによって今日かい?」


美枝(只野)→喜久雄(2740pt) 「わたしの好きになった人の伴侶がどんな人なのか確かめたくってしょうがないの~」


喜久雄(2670pt)→美枝(只野) 「女房のことはこの次でも今日はとりあえずどこにするんだい?」


美枝(只野)→喜久雄(2670pt) 「ダメダメダメ~そうやってはぐらかすぅ隠したらよけい見たくなっちゃうぅ~ダメだよ!今日はそうするって決めたんだからぁ」


美枝(只野)→喜久雄(2565pt) 「喜久雄さんの住んでるとこ○○町でしょ?じゃぁ自分でお宅探して奥さんみてやるんだからぁどうせ奥さんとは、いつか対決するんだからね!」


奥さんにバラすぞ~という脅迫を暗に含んだ、愛の押し売り。
気味悪がって、引いてくれればメッケもの。


喜久雄(2425pt)→美枝(只野) 「ははは、じゃ、また」


美枝(只野)→喜久雄(2425pt) 「口惜しい~!! 結局おくさんなのね!」


人って、何か口を開くと弱点をもらしてるのかもね。
Ψ(`∀´)Ψウケケ



結局、引力の強いつながりの方が残ったわけだ…



でも、それで正解。


妻の前に女だもの。

女の前に人間だもの。


夫婦の間で、これまでどれだけの事件を共にくぐり抜けてきたかは知らないけれど、
年頃の色気より、長年かかって築いた人間同士の信頼のほうが、強固なはずだもの。


脱線せず、正しい道に戻ったわけだ。

と、今日もサクラのわたしがうそぶく。

45.誰がために働く?②

ゆりこ(只野)→まーちゃん(945pt) 「その意地悪な親戚のひとがね、誰もいないところでゆりこのこと、厄介ものだっていったくせに、他の人がいる前では、早く元気な笑顔で戻ってちょうだいね、とか言ってくるのそんな嘘の関係に耐えられない、死んじゃいたいくらい…」


悲劇のゆりこ実演中。


まーちゃん(910pt)→ゆりこ(只野) 「ゆりこのうち、お金持ちなのにね、生活に困らないのに人間関係で悩んでいる人も少なくないのかな?うちは貧しかったけど不思議にみんな仲よかったんだよ」


まーちゃん(840pt)→ゆりこ(只野) 「こどもの頃ね、どうして親父って稼ぎわるいのに、3人も子供つくったのかなって反感もってたことあったの」


まーちゃん(770pt)→ゆりこ(只野) 「でもね、この歳になって自分で働きに出て、妹んちの幼さい子供ひざのうえにのっけてると、やっぱりかわいいなぁって思って…仕事苦しいのに子供つくるんじゃなくって、かわいい子供のために苦しい仕事もがんばってたんじゃないかなって思うようになったの」


まーちゃん(700pt)→ゆりこ(只野) 「親父はいつも遅くまで働いて帰って、ひとりで食事はじめるんだけど、子どもなんでいくらでも食べたいでしょ?それで食事してる親父のひざのうえに上がっていくんだけど、おかずとかいつも、親父はわざと残してくれてるの…


まーちゃんからのメールの中には、たまに田舎臭くて切なくなるものもあった。
同じ田舎しか知らない娘にでも、宛てて書いてるつもりなんだ。


サクラじゃないよね?とか聞いてくるのは、だいたい都市部のお客さん。
派手に騙されているのは、田舎の人が多かった。


こんな仕事があるとか、存在自体からウソな人格なんて、田舎人の発想からは浮ばないだろう。このわたしが、そうだったように…


いつか会えると思っている人につくしている。


まーちゃん(665pt)→ゆりこ(只野) 「ゆりこみてると、水槽の魚みたいね。お金は生活の頼りにはなるけど、必ずしも生きる頼りになるもんじゃないってことかな?」


でも、騙してしまう。これが仕事だから。


ゆとりのない人たちからでも。


この頃のわたしには、生きる頼りよりも、まず生活の頼りが必要だった。

44.Gone with the wind

出勤のために、駅のホームで電車待ちをしていた。


過去のことをぼんやり思い出していると、
あの時こうしておけばよかったとか、
あの時のあのことは、こういう意味だったのかしらとか、
違う角度からものが見えたりもする。


当時の理解では及ばなかったのだろうか。
また、これ以降にさらに違った見方ができるようになるのだろうか。


一人のメールの相手を思い浮かべたとき、ハッと気づいたことがあった。

ずいぶん前のことになるけど…


キョウ(375pt)→節子(只野) 「ホタルの墓の節子とおんなじ名前だね。じつは僕の妹の名前も節子です」

…というようなきっかけでメールのやりとりが始まった人だった。


でも、さわやかな感じの始まりとはうらはらに、しばらくすると随分クセの悪いお客だということが明らかになった。


キョウ(255pt)→あゆみ(只野) 「それでデート代のことなんだけど、今回はたてかえで払ってもらっていい?」


キョウ(315pt)→関根素子(只野) 「あつかましいかもしれないけど、その時10万ほどでもサポしてくれないかなぁ?」


キョウ(125pt)→マダム麗子(只野) 「お願いです。足を舐めろといわれたらそれでもやります!どうしてもあなた様のご支援が必要なんです!」


こういう感じで何人ものキャラに手を出すし、そのうえ必ずといっていいほど金をせびってくるのである。


ある時、意地悪なサクラにこんなことをされていた。

キョウ(140pt)→セレブな瞳(笹川) 「お願いです。どうしても今月末までに30万ないとダメなんです!お願いします。何でもします!」


セレブな瞳(笹川)→キョウ(140pt) 「じゃ、3べん回ってワン!とかしてくれる?そうしたらお金もって出て行くの、考えてもいいわよ?」


キョウ(105pt)→セレブな瞳(笹川) 「いま回りました。  …ワン」


わたしだけでなく他のサクラ達のキャラにも次々と金の無心をし、たちまち職場で話題の人となった。


キョウ(35pt)→節子(只野) 「最後のポイントになりそうだけど、出てきて話だけでもできませんか?なにも持たなくていいから…」


それっきり、メールを出しても不通になった。おそらく、ポイント代がないか、携帯の料金が払えなくなったんだと思う。


気づいたことというのは、このお客さん、どんなに窮したときでも、この『節子』にだけは金の無心をしてこなかったということ。


当時、どんなに「最低!」とか思っていても、その事に気づくと、困難からの防波堤になろうとしたことは、何かしらの誠意のようなものを感じる…



キョウさん、『節子』にだけは、本気だったの?
『節子』のことだけは、汚したり背負わせたりするのが我慢できなかったの?


不通になった今では、確かめる術はない。


風のように、これまで、何人もの新しい客が入り、去っていった。


つかみ戻すことのできない、通り過ぎた風。



警笛の音とともに、電車が入ってきた。
つよい風をひきつれて。


わたしの前髪が、ふわりと舞った。

43.シングル・ベル②

クリスマス・イブ当日。
出勤してタイムカードを押し、席に向かう。


管理の白石さんが、
「あれ?今日休みとらなかったんだ?」と、聞いてきた。


「来ましたよ。とくに予定もないんで。」
と答えると、


「よかよか。今時の若いもんにしてはめずらしい。助かるよ。」
と言ってきた。歳は私とそれほどかわらないくせに…


今日はオフィスのあちこちに空席がめだつ。
サクラをやっている人は若い人が多いので、自分達のデートやなんかで休みをとる人が多いのである。


それだけではない。


この日は、クリスマス・イブ。
サイトでは待ち合わせの約束が目白押しなのである。


これらの約束を全部キャンセルしたり逃げたりしていかないといけない。
当然、修羅場が予想される。それで、便乗して逃げてしまうサクラさん達もいるという訳である。


仕事は予想どおり、困難を極めた。


「今更これないっていっても聞けないよ?先に約束の場所に行ってまってるから。くるんだよ、いいね?」


「そんなこといわれても予約しておいたレストランやホテルなんか、どうするんだよ?予約代って返してもらえないんだよ??」


「そうやって今まで逃げてきたんだろ!?クリスマスこそはって言いつづけてきたの、自分じゃないの!!!」


「ふ・ざ・け・る・な」


もう、一つ一つに深く考えていられない。


転んで足を折った。親が、おばあちゃんが危篤になった。親が外出を許してくれない。思いつく、あらゆる言い訳が飛び交った。


客だって、今日こそはと気合を入れて準備して、高いポイント代に耐えてきたんだ。
それは、怒る。


でも、怒る人ばかりでもなかった。


ちとせ(只野)→タクちゃん(1770pt) 「クリスマスで他の人がみんなしごと休んでるから、残業で今日はいけそうにないのほんっとうにゴメンね…」


今のわたしそのまんまだ…。
怒られてもしょうがない、そう思っていたら返事は絵文字1個だった。


タクちゃん(1735pt)→ちとせ(只野) 「」

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(※クリックすると大きく表示されます)


なにこれ?


singuruberu22

これで一服しろって?


世の中、似たようなことを考える人もいるらしい。

singuruberu23

singuruberu24

うふふ。中身はなにかしら?


「外見も世間体もいっぱしなのに何故か彼女ができない…」とか、何故かなげき節を聞くことになったり…。


でも、気持ちを込めてメールすれば、たかが文字だけど、最後にはだいたいの人が許してくれた。
わたしもシングルだけど、たくさんの男の人の意見を聞いて過ごしたイブだった。


さびしさがこの世にあるのは、それによって愛の感激を測るため?


来年こそは、こんな所で騙されていないで、恋人と楽しく過ごしてね。

42.シングル・ベル①


クリスマスが近かった。


駅の付近には電飾のイルミネーション。
ボーナスが近いのか、どこか嬉しそうな人たち。
不景気でも、まだまだクリスマスには暗い空気を吹き飛ばす威力があった。


わが出会い系サイト「○○ネット」は、連日盛況。
世の男達も「せめてクリスマスだけでも恋人と過ごしたい。」と考えるのだろう。


博子(只野)→よっさん(3035pt) 「初めて会うときって、クリスマスイブにしない?だって、メモリアルな出会いにしたいの」


とかいって、ずいぶん前から引っぱってるお客さんもいるし、


リナ(只野)→なおまさ(1070pt) 「もうクリスマスなのに彼にフラれたばっかりなの急で悪いけど、もうクリスマスいっしょする人、いたりするの?」


なんて、かけこみネタまで、とにかくエサが何であれ、竿を入れればお客が釣れた。


まりこ(只野)→たかくん(475pt) 「このまま一人だと、満室とかってなってるラブホの前通ったりしたら切なくなっちゃうよね…どこかムードのある所で食事して、それからホテルでいい?どうせなら話の面白いひと選びたいんだけど、何かアピール聞かせて?」


たかくん(440pt)→まりこ(只野) 「クリスマスは性なる夜、なんちって」


はっはっは。


…寒い寒い。


「ローソクの灯りで食事できる所がいいな…それで窓際の席で二人、食事して…」


「ドライブしたり、カラオケしたりとか…」


「ホテル入るまえにちょっとコンビニよってもいい?」


なんて、リミットすれすれまで、パーティーな夜の物語して。


いよいよ当日直前、「最後まであなたにしようって迷ったんだけど、フェラーリで来てくれるって人が現れて…ごめんね」とか、


全員に送って終了。(もれなくはずれます。)


人は弱みにつけこむと、ついつい財布を開いてしまうとか。


この殺菌歯磨き使わないと、口臭がとれなくて嫌われちゃうぞ、とか。
この壷を買わないと、ご先祖様があの世で苦しんだままだぞ、とか。


クリスマスの華やかな光から、

この特別な夜に、女一人と過ごせないとは、お前は不幸な星の下に生まれたのか?
みんな楽しんでるぜ?

そんな影が霧のように広がる。


人並みの喜びもないまま、今年も終わってしまうぞという、
ゆるやかな脅迫。


それにつけこむ、嫌な商売。


この聖なる夜に ――

41.退屈な日

(595pt)→ももか(只野) 「でさ、おれ、そいつに言ってやったんだよ。男だったらはっきりしろやって」


ももか(只野)→(595pt) 「うんうん、それで!?」


(560pt)→ももか(只野) 「それで横にあったイス蹴りあげてやったらよ、イスがしょうぎ倒しになってそいつに当たったんだよ」


ももか(只野)→(560pt) 「うわー!つよいね。何だかかっこいい!」


(490pt)→ももか(只野) 「それでそいつらの仲間が立ち上がってよ。5、6人ぐらい。俺らは3人でよ、もうボコボコ。ボトルは割れるわ、仲間も血まみれでさ」


ももか(只野)→(455pt) 「チョー強いね。スゴすぎ!?わたしがいたら失神しちゃうかも~」


いい気分にさせれば、客も気前よく返事を返してくれるわけで、
実際こう書いてるのが、相手もよろこんでくれてるものとだと、そう考える客観的なわたしがいて、


ガキっぽいな~とか、


そんなの蛮勇だよとか匹夫の勇だよとか、


そう考える純粋なわたしもいる。


(350pt)→ももか(只野) 「で、帰りぎわにいってやったんだよ。ここのマスターに免じて許してやらあって」


この客(翔さん)を軽く見てしまったのか、だんだん相手にするのが面倒くさくなって、ついうっかり演じるのを忘れて、


ももか(只野)→(315pt) 「でもね、戦争を始めるのは小さな銃の一発からでもはじめられるが、戦争を止めるのは、大物政治家でも難しいって意味のことばがあるよ?争いをとめるほうが大物なんだよ?」


とか、つい素の自分の意見を書いて送ってしまったり。


それで、「ノリ悪りぃな~」みたいな返事が返ってくるかなって思っていたら


(280pt)→ももか(只野) 「そういう言葉とか、どうすれば言えるようになるの?会って話とか、つきあったりとかできないかなあ?」


あら意外。


ももか(只野)→(280pt) 「本よんだり日頃からそう考えるように習慣つけたら?わたしにはまだ翔がどんな人かわからないよ?」


(245pt)→ももか(只野) 「ちゃかさないで教えてよ!正直いうと、もうガキは卒業したいんだよ!」


ももか(只野)→(245pt) 「うぅ~ん、わかった。でも急に会うのはコワいし、この後しばらくメールしてみて、翔がいい人だってわかったらでていくことにするよ。いい?」


授業料は、ちょっと高いぞ。


(210pt)→ももか(只野) 「ええー!でもポイント代が…しばらくってどれくらいしばらくかな…」


でも、もうガキは卒業したいと、

そうひらめいたとき、すでに少し卒業したのでは?



なんて。

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